栃木県医師会塩原温泉病院-県北総合リハビリテーションセンター-

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病院コラムのご案内

温泉病院の療養型病棟における整形外科について

栃木県医師会温泉研究所附属塩原病院
リハビリテーションセンター長(整形外科医長)千葉昭彦

 当院の療養型病棟に入院する整形外科疾患としては、慢性関節リウマチがもっとも多く、変形性や脊柱管狭窄症などの脊椎疾患、変形性膝関節症が続きます。他に脊髄損傷、肩こりや肩関節周囲炎も含めると、9割強が慢性疾患となります。その主訴は、疼痛、あるいは疼痛に伴う体動困難、歩行困難や日常生活動作の低下がほとんどです。残りの1割は外傷後などで、社会復帰を目指し最後のリハビリとして入院してきます。我々はそれぞれにリハビリプログラムを作成していきます。整形外科疾患を当院療養型の特徴である"温泉"を中心に述べたいと思います。

 整形外科疾患の症状のほとんどは疼痛に関係するもので、急性疼痛から、心理的因子を含んだ慢性疼痛まで様々な疼痛があります。その疼痛の原因は器質的疾患に由来する痛みのほかに、心身症や神経症などから来る不定愁訴も加わってきます。またリウマチ患者のように、疼痛の愁訴はつねに同じ強さではなく、気候や家庭内環境など自分を取りまく状況により大きく影響されます。日常診察では、薬物療法、ブロック注射やマッサージなどで除痛を試みます。もちろん効果はみられますが、慢性の、心身症などが含まれる疼痛は困難であることをよく経験します。疼痛に対する温泉療法の効果は成分的なものも含めいろいろありますが、第一に、温熱効果があります。器質的疾患に対し、末梢血管拡張、血流増加や側副血行路の改善により除痛を伴うものとされています。しかし、慢性疼痛患者に対して除痛のみでは完全な治療効果を満足させることは少ないです。それに加えて、温泉が直接皮膚に触れる効果(水圧)と、「ゆったりとした」という心理作用が大きく影響してきます。さらに、長期の連続した温泉浴は、自律神経の調節障害の状態に対し、その調節状態を回復させ、一定の正常域内に戻すという効果の報告もあります。当院の気泡浴、ハバード浴あるいは一般浴の長期の活用により疼痛に対する効果が期待されます。

 最近、リハビリにおける温泉プール運動療法が見直されています。その臨床効果は、直接作用と間接作用、局所作用と全身作用、即効的効果と遠隔効果などに分けられますが、まとめますと、全身に対する温熱効果により鎮痛と筋肉のスパスムの緩解が得られ、浮力の助けも借りてリラクセーションを容易にします。この結果、患者は楽に動くことができ、関節可動域もおおきくなります。浮力によって荷重時の疼痛が軽減し、歩行のみならず全身の運動を容易にするので、特に慢性関節リウマチは全身の関節痛と拘縮を伴いますので、プール運動療法の適応があり有効と思われます。実際、長期実施した慢性関節リウマチ患者の活動動作の改善を認めています。今後、慢性関節リウマチのみならず、変性疾患の増加に伴い、プール運動療法がますます重要になると思います。

 慢性疾患では、温泉以外にも理学療法や作業療法の長期の積み重ねが必要となります。年齢を考慮した筋力増強訓練により、3ヶ月ごろよりその効果がみられます。それが慢性関節リウマチでは歩容の安定となり、日常生活動作の改善につながります。変性疾患では体動の安定となり、社会復帰への自信につながります。作業療法では、やり遂げられることが、心理的効果となっていきます。療養型での整形外科疾患の治療は、確かに外傷後などの治療とは異なり、予後をとらえるのが難しい面があります。従って患者の状態を把握しながら、こつこつと治療を進めることが必要となります。それは3歩進んで、2歩あるいは4歩も5歩もさがることもあります。当院での療養型のリハビリプログラムは、患者とともに進んでいくものと思います。

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