平成15年9月8日
塩原病院プロポーザルコンペの審査結果について
 さる8月7日に締め切った塩原病院プロポーザルコンペについて、審査委員会は二次にわたる審査を行い、審査結果を栃木県医師会常任理事会に答申した。常任理事会は9月5日に開かれ、審議の結果、審査委員会の答申を承認した。
  選定結果は下記の通りである。
  最適設計候補者 株式会社 伊藤喜三郎建築研究所
  次  席  者 株式会社 惟建築計画

審査経過ならびに講評 審査委員会

経過等
  審査は二次にわけて行った。
  プロポーザルコンペは、「案」をそのまま建てるというよりは、「案」を通して考え方や建築的構想力を評価し、基本的にそれによって「人」を選ぶ方式であるとの考えによって選考を進めた。このため1次審査においては応募者から提出された提案書(匿名)のみによって優秀提案5点を選び、提案書以外の書類については2次審査(ヒアリング)時における参考資料とするにとどめた。
  1次審査は平成15年8月17日、審査員10名出席のもとに行われた。事前配布の縮小版によって、各自既にある程度の理解を持ち寄っていることを前提に、まず提案書29点の原図について質疑を交えながら自由閲覧を行い、理解を深めた上で各自5点程度を選ぶ無記名投票を行った。この結果、得票が1票以下となった計16点については対象外として除外した。別表参照。
  次に2票以上を獲得した13点の提案書について、1点ずつ順に提案内容の評価に関わる意見交換を十分に行った後、再度各自5点以内を選ぶ無記名投票を行った。その結果、出席委員の半数に当たる5票以上を獲得した5提案を1次審査通過とし、2次審査(ヒアリング)対象者とすることを決定した。別表参照
  2次審査は8月31日、審査員11名出席のもとに行われた。1次審査を通過した5者は,株式会社惟建築計画(No.8)、株式会社エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ(No.9)、株式会社田中建築事務所(No.13)、株式会社伊藤喜三郎建築研究所(No.17)、株式会社山下設計(No.19)の5者であった。まずこの5者について、提案書以外の提出書類を閲覧し、応募者のこれまでの経歴・実績ならびに本プロジェクトに対する業務実施体制等について問題がないか否かを検討した。その上で5者に提案書についてのプレゼンテーションを順次求め、応募者との間で質疑応答を交わした後、最終討議を行った結果、伊藤喜三郎建築研究所を最適設計候補者とすることを満場一致で決定した。次いで次席者の選定に入り、挙手により推薦者9名を得た惟建築計画を候補とすることとした。

講評等
  今回のプロポーザルコンペは、不整形で高低差もある山地の敷地において診療を継続しながら建て替えを行うという困難な条件であるにもかかわらず、29点に及ぶ提案が寄せられ、その多くが密度の高い優れた提案であった。評価の主要なポイントは、地形を生かした建て替え計画の巧拙と回復期リハビリテーション病院のとらえかたの2点に集約された。
  第1の点については、敷地の中心部に広く既存施設が広く建っている現状から、多くの案は2〜3期にわたる建て替え案であった。中には仮設建築による 暫定利用を含めた提案も散見された。場所としては、敷地北部の現駐車場位置に建築本体の一部または主要部を建てることから着手し、その部分の完成を待って南方向へ建設を進める案が多かった。その中にあって、事実上1期で完成させてしまう案も若干点見られた。その場合も場所的には現駐車場位置に建てる案が多かったが、現駐車場位置から西南方向への下り斜面にかけて建てる構想も少数見られた。
  いずれの場合も、難しい敷地条件への取り組みには苦心のほどが察しられたが、結果的に既存建物があったことを感じさせないような見事な解決案がいくつも示された。早期の建設を願う病院にとって、工期が長くなる案は望ましくなく、また仮設建築に一時依存する案もその分負担増となる点でマイナス要素とはなったが、評価としては、出来上がる完成形の価値とのバランスで判断した。
  第2の点については、回復期リハビリテーションにおいては病床まわりから次第に行動領域を広げていくプロセスが重要であるとの考え方から、病棟の計画について、ADLスペース・食事スペース・リビングスペース等の設け方やスタッフスペースの配置まで、きめ細かな提案が数多く寄せられた。
  また、温泉プールを含むPT・OT等のリハ部門についても、その存在を前面に押し出してアピールする積極的な提案が多く出されたが、中には温泉プール等と病棟の関係を、リゾートホテルのような感覚で捉えた提案もあった。リハ部門については、豊かな空間づくりとその存在のアピールは重要である反面、回復期リハ患者にとって人目に晒されたくない面があることについても考慮される必要があろう。
  伊藤喜三郎建築研究所を最適設計候補者とした理由は、提案が最も優れていると判断された上、2次審査におけるプレゼンテーションも説得力があり実績等の面でも問題がなかったためである。
  提案は、敷地の性状に沿った緩やかに弧を描くシンプルな形状を事実上1期で完成させるものであった。工期の短さが歓迎された点は大きかったが、それは一つの要素であり、計画面・デザイン面の評価も極めて高かった。背景の山の緑に溶け込む建築は気品を漂わせて清々しく、敷地の読み取りの深さは見事である。ピロティをくぐって南面から玄関に導くアプローチも素晴らしい。階の構成は明快であり、内部空間のしつらえも明るく開放的で余裕もある。ただし病棟については、縁側スペースの提案やスタッフステーションの位置について疑問とする意見もかなり出された。設計者としては、これらの点について病院側と十分協議が必要であることを付記する。
  惟建築計画の提案については、施工手順や平面計画上に問題点が幾つもあるものの、ガーデンテラスを介した環境づくりの発想が新鮮な魅力を持っている点が高く評価され、次席となった。
  なお2次審査に残った他の3案について一言すれば、No.9については地形を生かしたデザインが高く評価された一方、仮設外来の負担が大きいことや内部計画面の魅力が今一歩感じられないこと等が惜しまれた。No.13については明快な構成が高く評価された一方、病棟が窮屈で回復期リハへの対応に難があることや工期が長いこと等が惜しまれた。No.19についてはランチルームを中心とする共用空間の魅力が高く評価された一方、1〜2階の病室への陽射しが期待できないことや工期が長いこと等が惜しまれた。
  以上であるが、全般的に提案の質が高かったことを踏まえて、要項で謳った宇都宮ならびに東京での提案書展示については、1次審査の最初の投票で2票以上を得た13点を公開する予定である。更に1票以下であった残りの19点についてもユニークな提案や部分的に魅力のある提案も少なからずあったことを考慮し、でき得れば全提案を収録する冊子を作成したいと考えている。
以上