栃木県医師会塩原温泉病院-県北総合リハビリテーションセンター-

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病院コラムのご案内

健康で長生きするために

宝住与一(前理事長・前日本医師会副会長)

 国民健康保険組合員の皆さん、新年おめでとうございます。
 栃木県医師会長としてご挨拶申し上げます。
「住み良い環境のもと、長生きをすることは、すべての県民の願いであります。」これは毎年9月上旬にある公衆衛生学会の時の、県の方から渡された原稿の一説であります。 私は、県民だけでなくすべての人の願いであると思います。個人一人の力で住み良い環境を作ることはすぐには無理と思いますので、皆さんが心がけていただくこととしては、健康で長生きするために、いくらかでも役立つかもしれないと思うことを書いて、新年の挨拶に代えたいと思います。 先日雑誌を見ていたら、長寿番付を目標に目指す4つの方法と題した、京都大学教授家森幸男先生の記事を目にしました。 その見出しに、WHOの調査活動で世界25ヶ国60箇所の長寿地域と短命地域を調査され分析されたのが、家森先生です。先生は、今、沖縄に注目し、さらに沖縄からハワイに移住した集団は長寿に、一方沖縄からブラジルに移住した集団は短命になり平均寿命が17年も日本に住んでいた人より短く、その原因を分析し、何年か前のアメリカの心臓学会での発表が話題を呼んでおりました。そのさわりの要約を書いてみたいと思います。

1.25ヶ国60地域に渡る調査
 「脳卒中ラット」は、10年以上の歳月をかけ1974年に京都大学で確立された。このユニークなモデルは、100%脳卒中を起こす遺伝子をもつ系統である。 しかし、栄養環境を変えると天寿を全うする。国際調査活動もそれから出発した。 今、地球上でいろいろな人種・集団があり、その人達がいろいろな食生活をしながらある場所では長寿に、ある場所では短命である。そういうところを環境の中でも、特に「栄養」という切り口で客観的なマニュアルにのっとり、分析すれば、どういう栄養状況の時、どういう疾患が起るかはっきりすると考え、中国、エクアドル、その他25カ国の民族でこの研究をした、一部を書きます。 人は血管とともに老いると言います。平均寿命を伸ばすには、まず心筋梗塞、脳卒中といった循環器系の病気を予防するのが重要であり、モデル動物を用いて研究した良い栄養素というのは、人間の調査でも同じと言うことが分かり、コレステロールが高すぎると心筋梗塞になるが、低すぎると脳卒中になる。そうすると脳卒中を防ぎ心筋梗塞も起こさないコレステロールの値があるはずである。それは血清100ミリリットル中180~200ミリグラムである。その最高のレベルに入っている集団の一つが沖縄です。さらに沖縄からハワイに移住した1980年に世界一の長寿集団となった日系人の人たちは、調査によると、ハワイで肉等を食べるようになり、またコレステロールが上がっている人も200以下。これから日本が欧米化していくのにどうしたら良いかの指針を与えてくれる。 世界のいろいろな長寿集団、コーカサス、シルクロード、中国の幾つかの都市、アルゼンチンのビルカバンバなどありますが、数字的に正確な死亡率を捉えにくい。 そういう意味で、沖縄及び沖縄からハワイへ移住した人たちの死亡率、平均寿命は正確で、最も信頼できるデータである。

2.長寿の秘訣は、まず減塩
 同じ欧米化でも、沖縄からブラジルに移住して短命になった人は、遺伝子的にはハワイに移住した人と同じなのに、100歳以上の老人は4分の1に減り、平均寿命も、日本に住む人より17歳も短い。しかも心筋梗塞が多く、50歳代前半で4人に1人が糖尿病の傾向にある。 原因の一つは、ブラジルは肉が安く、「シュラスコ」という焼肉が美味しい。肉は他の世界の長寿地域のように香辛料を使って小さいサイズにして食べるのではなく、大きくてしかもブラジル産の岩塩をはたきつけて食べる。この塩が動物実験でも、腸からのコレステロールの吸収を高めて、大変悪い。日本でも減塩しなさいというと皆嫌がる。ところが、沖縄の人の1日の塩摂取量は8g。ハワイに移住したお年よりは、美味しい食べ方をしながら、1日6g。そうしたらもちろん脳卒中は少なく血管性認知症も減る。 ちなみに、栃木県民の1日の塩摂取量は12.8gである。生活習慣病は減るはずがない。

3.次に、抗酸化栄養素
 日本の平均寿命の伸びは、高齢の脳卒中者の死亡が減っている。 しかし、生活の質(QOL)から考えると問題がある。寝たきりや本格的な認知症の人が全国で140万人以上いる。寝たきりになる第一の原因は脳卒中、次が骨粗鬆症(osteoporosis)である。しかし併せて54%の「寝たきり2大原因」は食物によって予防できるのである。日本では数字的に脳卒中は減ったが、脳梗塞という形で脳の血管が詰まった状態の人が多い。全く症状のない人も、無症候性脳梗塞という形で、50代で4人に1人、 60代で3人に1人、70代以上では何と2人に1人と増加し、その梗塞が進めば認知症になる。この予防法としては血流のコントロール、夜間に血圧が下がり、灌流が戻る時に活性酸素を発生し、アポトーシスを起こし、神経細胞が死んでいくということで、抗酸化栄養素を与えておくと、実験的なデータではアポトーシスは防げる。いわゆる緑黄色野菜や果物といった抗酸化栄養素を持ったものを摂取していれば防げる。

4.沖縄、長寿食の秘密
 沖縄の食事が優れている理由は日本食の良い影響と中国南方の広州等のよい影響が融合したからである。例えば、豚肉は食べるが茹でこぼして油を除いて食べる。中国の影響として同じ豆腐でもいわゆるにがりで凝固させた固い豆腐で、たんぱく質も多く、血圧を下げるマグネシウムも含まれる。さらに日本の影響として魚を食べる。そして、海藻も多く食べる。これらは、まさに長寿食の栄養源である。 さらに沖縄からハワイに移住した人は、沖縄食を大切に保ってきた。そしてハワイに渡った当初は日本で少なかったたんぱく質も食べられるようになったし、トロピカルフルーツによって抗酸化栄養素やカリウムが摂れるようになった。気候も良く、塩もあまり摂らない。

5.大豆の効用
 大豆は骨からカルシウムが流出するのを抑えて骨粗鬆症の予防になり、ひいては寝たきりの予防になる。大豆のイソフラボンは、女性の更年期における血圧やコレステロールの上昇をコントロールしてくれる。 さらに世界中でイソフラボンの値が高い地域ほど、前立腺癌、乳癌の死亡率が低い。イソフラボンは実は1000分の1程しか作用しない非常に弱い女性ホルモンですが、エストローゲンの影響を抑えることにより乳癌の増殖を抑え、癌を転移させないで、そこで天寿癌となる。自然に癌を治まらせる。さらに世界中のデータでもここで調べた範囲では、あらゆる癌の死亡率とイソフラボンの摂取量が逆の相関関係にあることが分ってきた。 日本の伝統食の大豆は、多くの、特に生活習慣病の一次予防に有用なのである。

 新年にあたり、国保組合員の皆さんが、これを読んで丈夫で長生きするための何らかの示唆を得られればと、これを書いた次第です。

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